『黒執事Ⅱ』第1話

やはり水樹奈々は男性が良く似合う。というよりヒロイン声優などそこら中に転がっているのだから別に水樹がやらなくてもよいのであり、こういう少年役こそ水樹の本領である。他にヒロインばかりやっているが本来は少年役に適する声優に井上麻里奈がいるが、これらに共通するのは低声部の張りが尋常でなく厚いということである(地声の高低とはあまり関係ない)。
女性声優が少年役をやる場合に起こってしまう最大の弊害は、それが男性に聞こえず「声優誰々」として聞こえてしまう、ということである。この点を解決するには単に声が低いとかハスキーなだけでは駄目なのであって、そこに声の「厚み」が求められる(もっともかかる厚みは声の高さと一定程度の相関関係があるから、必ずしも声が低めの女性声優が少年に適さないということにはならない)。これは例えば小清水亜美井上麻里奈とが共に少年役を試みる時の差異を想像してみれば足る、乃至は名塚佳織皆川純子に少年役が務まるか、ということを想像すれば足る(なお、これらの声優が少年役を何本もやっている、と言う事実は、これらの声優が少年役に適した声の厚みを持っていることの確証ではない。例えば少年役をやることが比較的多い皆川については、その声の本質は内面化された本質がエンジンをかけるが如く徐々に迸っていき、最終的に「女性的なるもの」が絶頂を迎えるというところにあるのであって、これは少年に求められる声とは本性的に異なる。我々が皆川純子の演ずる少年にエロティックな点を見出すのはこの故である)。これらの者どもの声は本性的に細く、どちらかと言えば天上的であり祝祭(Feier)の雰囲気を湛える(それ故これらの声優が少年をやる時の声は、彼らが怒りを表現する際の声に相似である。というのも祝祭において表象される神の声は、喜びのみならず怒りとしても顕現しうるのだから)。従って彼らの演ずる少年達は、どこか浮世離れしているのである(逆に言えばそういう少年ならば彼らには適し、逆に水樹や井上には適さない。本来『コードギアス』のV.V.とかは彼らにやらせて良いはずだが、しかし皆川も名塚も既に配役を得ていたのだからそれは無理であった)。男性声優ならばかかるオーラは石田彰に付与されている(そして石田が神的存在として顕現するアニメの多さを考えてみよ)。

そういう点でまさに水樹(や井上)はキングオブ少年声優であると言えるだろう。彼らの怒りは内面がない代わりに、彼らの怒りは凄みを持つ(暴力団員が肩をいからせて歩いているさまを想像せよ)。因みに少年に適した声優であるか否かというメルクマールは、当該声優が歌った歌の内、どう聴いても男が歌っているようにしか聞こえないものがあるか否かである。従って少年声優とは、水樹、井上、そして斎賀みつきなどである(他にもいるのかもしれないが思いつかない)。

黒執事Ⅱ』の内容には興味がない。あるのは水樹のドSぶりである。櫻井もこういう役の方が映える(普通の役よりも)。